麻酔器における酸素フラッシュとは

治療用機器

多くの外科手術などで使用される医療機器である麻酔器。神経に薬物を作用させ、一定時間患者さんが痛みを感じない状態を作りだし、筋肉を弛緩させ手術による反射を起こさせない為に使用されます。今回はその麻酔器に関係する「酸素フラッシュ」について見ていきます。

麻酔器について

麻酔は大きく分けると、痛みを伴う切開や縫合等をおこなう箇所に麻酔をする「局所麻酔」と、意識鎮静の形態にする「全身麻酔」があります。全身麻酔には、静脈から麻酔薬を注入する「静脈麻酔法」と口や鼻から麻酔薬を吸入させる「吸入麻酔法」があります。

麻酔器は麻酔ガスを患者さんに吸入させる医療機器で、手術で使用する際には呼吸管理と麻酔管理をおこないます。そのため、人工呼吸器の部分の性能と麻酔ガスを供給するためのガス濃度のモニタリングと調節ができるような機構となっています。

麻酔器は呼気から吐き出された麻酔薬が含まれた混合ガスを再度利用する為、二酸化炭素を吸収するための装置や排ガス装置が必要となります。

酸素フラッシュとは

通常の人工呼吸器ではなく全身麻酔器に備わっている機能で、多量の酸素を瞬時に患者さんの呼吸回路へ流す為の装置です。流量計や気化器は通さないで直接酸素を供給します。麻酔器の使用は患者さんにとってリスクとなり得る部分を含んでおり、アクシデント等によって、予期していない時に流れると肺の圧損傷等の危険性などもあります。

JIS規格

工業標準化法に基づいた日本工業標準調査会の審議を経て、厚生大臣が制定した日本工業規格であるJIS規格において、定格酸素供給圧で外気開放の状態の共通ガス流出口に毎分35~75Lの定常流の酸素を出すことが要求されます。さらに自動で閉じる自閉式を備える必要があり、酸素フラッシュの装置は誤操作が起きにくいような構造となっていなくてはいけません。

使用のタイミング

酸素フラッシュを用いた場合、ガス配管等から供給された特定流量の酸素が流量計や気化器を通過しない為、吸入麻酔薬濃度は希釈されます。緊急時に加圧バッグを膨らませたい時や点検の際に使用されます。

麻酔器内配管のリークテスト ~酸素フラッシュの手順~

最初に、神経ガス流量は最小流量、もしくは0になるよう調整します。ポップオフ(APL)バルブを40cmH20以下に閉め、Yピース(もしくは患者呼吸回路先端)を閉塞します。

酸素の分流を5~10L/分流し、呼吸器回路の内圧を30cmH2O以内になるまで呼吸バックを膨らまして、バックを押します。この時、回路内圧を40~50cmH2Oにし、リークがない事をチェックします。

その後呼吸バックを押していた手を放し、30秒の間に回路内圧低下の範囲が5cmH2O以内かを確認します。圧力を調整するポップオフバルブ(APL弁)を開き、回路内の圧が低下した事を確認してから、酸素フラッシュを行い、酸素が十分な流量である事を確認します。

酸素が十分な流量である場合は、閉塞回路の5Lバックがおよそ5秒間で20cmH2O以上の内圧で膨らむ事を確認し、最後にCO2アブソーバーの接続確認を行います。

まとめ

麻酔器の回路トラブルは、肺組織が損傷を受けるような事故を起こす可能性もあります。安全で効果的な意識鎮静を行うことができるように、麻酔器の安全性や使用性を確保する為にも、医療機器に問題が無いか確認するための点検等はとても重要です。

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