基本から展開する、麻酔器の原理および役割

治療用機器

手術治療に伴うリスクを軽減させる上で不可欠な医療機器。それが全身麻酔器です。これには、患者さんに麻酔効果を及ぼす以外にも、重要な役割が課せられています。麻酔器に備えられるべき機能と、麻酔効果の原理について、基礎的部分を踏まえつつ見ていきたいと思います。

全身麻酔器の仕組み

麻酔には、身体の一部のみに効果を及ぼす局所麻酔と、身体全体に作用する全身麻酔が上がられます。手術の際に用いられるのは主に全身麻酔です。

全身麻酔では、意識を一時的に喪失させる鎮静、痛みなどの感覚を遮断する鎮痛、筋肉の緊張を抑制させた状態に置く筋弛緩という3つの作用が患者さんにもたらされます。その効果によって、手術に付随する危険性が軽減されるというわけです。

これらの効果を見出す全身麻酔器は、大まかに分けて2種の部分から構成されています。それらは、麻酔ガスを作り出すガス供給部と、麻酔ガスを患者さんに吸入させる呼吸回路部の2装置です。

ガス供給部では、空気・酸素・亜酸化窒素からなる気体に気化させた麻酔薬成分を混ぜ合わせ、麻酔ガスが作られます。その際に、各気体や成分量を調整することにより、施術中の患者さんのその時々における状態にマッチした成分割合のガスが生成されるわけです。

ガス供給部にて配合・調整された麻酔ガスは、次なる呼吸回路部へと送られます。そこでは、患者さんの呼吸に伴う吸気のタイミングに併せて麻酔吸入がなされます。呼吸の際、患者さんが吐く呼気にも麻酔効果が残存しており、その成分も再利用することが効率的と言えるでしょう。

そのため呼吸回路部は、内部の気体が同じ経路を循環する構造となっています。これにより、一旦呼気から排出された成分も再度体内に取り込まれることとなるわけです。

また、呼吸回路部には麻酔効果以外の機能を担う部品も設置されています。患者さんの呼吸を補助する人工呼吸器、回路内の二酸化炭素を除去するカニスタ、回路内のガス圧を調整するAPL弁などがそれに相当します。

麻酔作用の原理

体内に取り込まれた麻酔成分は肺に送られ、酸素とともに血液中に入り込みます。そして動脈を経由して脳に運ばれ、そこで中枢神経系を麻痺させることによって全身麻酔の効果が及ぼされます。

麻酔成分がどのようなメカニズムで脳に影響を与えているのか、未だ完全に解明されていません。原理的な点では不明な点が多々あるものの、経験則的に使用されていると言えるでしょう。

麻酔器が担う役割

麻酔器の役割は、患者さんに鎮静・鎮痛・筋弛緩の効果をもたらすだけではありません。麻酔ガス使用に伴うリスクに対処する機能も兼ね備えられています。

中でも主要となるのは、人工呼吸機能と言えるでしょう。中枢神経系が麻痺した状態では、生命維持に欠かせない呼吸など、本来自律的に働く身体機能も低下します。その弱まった呼吸機能を補助する機能も機器機能に付属されているというわけです。

また、呼吸回路部が循環型となっている構造上、時間経過とともに管路内の二酸化炭素濃度が上昇し、酸素不足や麻酔効果低下の懸念が生じます。その対応策として使用されているのがカニスタです。その内部にはソーダライムが内蔵されており、これが二酸化炭素を吸収することにより、回路内の二酸化炭素量を低下させるわけです。

呼吸回路内には、ガス供給部から送られる新鮮ガスや患者さんの呼気が入り込む状態となっているため、気体による圧力が掛かります。状況に応じてその管内のガス圧は変化するため、状況に応じて圧力を調整する必要があります。

その役割を担うのがAPL弁です。これを適宜開閉することにより、回路内の余剰ガスを外部に排出するなどして、回路および患者さんの体内呼吸器官への加圧状態を適切に保つことが可能となります。

まとめ

以上のように、全身麻酔器の基本的構造を抑えながら、麻酔の原理や装置各部の役割について確認してまいりました。適切な装置利用を行うには把握しておくべき必須事項に当たると言えます。

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