脳波計における時定数の役割について

診断用機器

人間を含めて生き物の脳の仕組みは複雑であり、解明できていない部分がほとんどです。その脳の中で発する電気信号を基にして装置を使い人間の脳波を調べることができます。脳波測定を行っているとノイズが混入してくる様々な原因がありますが、このノイズの遮断には時定数が関係しています。今回は、脳波計における時定数の役割について紹介しましょう。

周波数によって変化する脳波と時定数

周波数は大きくδ(デルタ)波が示す「0.5~3Hz」、θ(シータ)波が示す「4~7Hz」、α(アルファ)波が示す「8~13Hz」、β(ベータ)波が示す「14~30Hz」に分類されています。

熟睡時や昏睡状態に発するδ波の出現や、深いリラックス状態や浅い睡眠時になるとθ波が関係しており、α波の場合は心身がリラックスした状態をあらわしており、対するβ波は緊張状態やストレスを感じた状態にあらわれます。

時定数の関係は、脳波計の較正電圧を入れた場合に、振幅が37%以下まで下がる事に対する所要時間の事になります。時定数の数値が小さいほど、δ波やθ波などの徐波部分がカットされる事で、周波数の早い特徴を示すβ波などが計測しやすくなります。この時定数の大きさと、脳波を計測する周波数の速さは反比例する事になっています。

脳波計の時定数の役割について

脳波計による測定を行っていると、様々なノイズが混入してきます。ノイズを引き起こす原因となるのは、医療機器そのものが発する場合もあれば、患者さんの身体活動から発するノイズの場合もあります。

人間が咳を発する動作によって、身体が緊張状態を示して、身体に力が入る事で筋肉に変化をもたらして、電気信号を発するようになります。これを、筋電図といっています。他にも、緊張による呼吸のみだれや発汗によっても症状を発します。

このようにノイズがある事で正確な判断材料となりにくいので、ノイズの遮断を必要とします。脳波計に備えられた高周波フィルターや低周波フィルターを利用して遮断を行っています。筋電図のように、身体活動の変化から発するノイズは、周波数が高い数値を示すので、高周波フィルターを使用する事で対応できます。

もう一つの原因である呼吸や発汗から発するノイズの数値は、周波数が低くなるので、低周波フィルターを使用して遮断しています。「低周波の遮断」を助けるのが「時定数の役割」となっているのです。

具体的には、脳波計の時定数は0.3秒であらわしています。「低周波フィルター×時定数=0.16」も成り立ちます。遮断する数値の求め方は以下の計算となります。πパイ=3.14です。

〇低周波フィルター=1/(2π×0.3)=1/(2×3.14×0.3)=0.53Hz

※約0.5Hz未満の周波数は遮断されるようになります。時定数の数値を下げる事で、脳波を見やすく出来ますが、脳の機能が低下している場合や、子供の脳波はより低い状態をあらわしている為、脳波計の時定数を下げる事は、このような場合の処理は妥当ではないので注意したいものです。

まとめ

時定数の役割について説明しました。時定数が、周波数の速さと「反比例する」関係と、低周波数のノイズを軽減させる役割で、より鮮明な周波数を導き出す事が可能です。しかし、子供や脳機能の低下のある検査対象には注意する事を確認しましょう。

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