体内にボルトが入っている場合のMRI検査について

診断用機器

磁気を利用して身体の内部を画像化するMRI検査。磁気を用いる関係上、安全のため装置内への金属類持ち込みは禁じられます。しかし患者さんの中には、骨折固定用ボルトなど体内金属を使用されている方もおられます。そのような場合、どのように安全性が保たれるのでしょうか。

MRI検査とは

MRI検査の原理は、磁気共鳴現象を応用したものです。

人体を構成している組織や器官は数多の種類の細胞でできており、それぞれの細胞には水分すなわち水分子が含まれます。その水分子は酸素原子と水素原子で成り立っています。そのうちの水素原子の向きについて、磁気と電波で変化することを磁気共鳴現象と言います。

自然な状態では、水素原子は各々バラバラの方向に向いています。しかし、強力な磁場の中ではその向きが一定方向となります。その状態で、RFパルスという電波が入ると、その影響により磁場の中の水素原子は特定の方向へ向きを変えることとなります。

その後、RFパルスを切ると、水素原子は磁場に基づく向きへと戻ろうとします。その際、水素原子が含まれている素材によって、元の向きに戻るスピードが異なってきます。

MRI装置は、その時に生じる戻りスピードの差をデータとして検出し画像へと変換することで、体内の様子を描画するというわけです。

MRI検査では、円筒状の磁石架台の中に患者さんを一定時間置くことで行われます。検査中、磁石架台の内部には磁気共鳴現象を起こすべく10000ガウスもの強力な磁力が発生しています。

その磁場内に磁気の影響を受けやすい金属類があると強い力で磁力に引き寄せられ、ともすれば人体を傷つけてしまうでしょう。他にも、検査の影響で金属部分が高温を発するおそれも考えられます。それらを避けるべく、患者さんは検査中金属類の着用を禁じられるわけです。

体内に金属が入っている場合

しかしながら患者さんの中には、簡単に脱着できない金属が体内に入っている方もおられます。そのような体内の金属は、例えば折れた骨を繋ぎとめるために用いられる固定用ボルトなど、医療措置として施されているものや、ケガや事故などにより体内に残留している金属が主と言えるでしょう。

こういったものを体内に持つ患者さんに対し、MRI検査を行うことは可能なのでしょうか?
これに対する答えとしては、体内金属の種類によると言えるでしょう。

骨折固定用ボルトなどの整形外科用固定具には、主にチタンなどの非磁性金属が使用されています。それらは整形外科以外の分野でも体内の医療措置に利用されます。このような類の金属は、MRI検査に伴う危険性が低いと見なされるのが主です。

外科的医療措置として体内器官に取り付けられるものの中には、機械的構造や機能を持つものも含まれます。その中には磁気の影響を受けやすい電子機器などの部品が使われている製品もあり、MRI検査が不可能となるケースもあるでしょう。

また、ケガや事故などで体内に金属片などが残っているようなケースでも、MRI検査が不可となります。

患者さんの体内に何らかの金属が入っていないか、体内に医療器具が用いられている場合それがMRI検査に適合した製品であるのか、そのような状況を検査前に把握しておくことが重要と言えます。

まとめ

以上のように、MRI検査は磁力と電波による磁気共鳴現象を応用して体内を画像化する検査であるという基本を踏まえながら、患者さんの体内に金属が入っている場合検査できるかどうかについて見てまいりました。個々のケースによりますが、一般的には非磁性金属で構成された医療器具であれば検査可能、磁気の影響を受けやすい金属であれば不可と判断されるでしょう。

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