MRIからわかる炎症の画像診断について

診断用機器

MRI検査によって、CTやX線と違った画像診断が可能となりました。全身の広い範囲での検査や機器の性能的な事により、動きの少ない部位に対しての診断を得意としています。今回は、MRIと炎症に関することについて紹介していきます。

MRIの画像の鮮明さ

CTは人体に含まれる70%の水分の水素元素を基に画像を構成する仕組みとなり、X線を使用しないので被爆のおそれがなく、画像の情報量によって鮮明な画像を得る事が可能です。

しかし、強い磁場を発生するのでピースメーカーなどの金属の使用が出来ないマイナス面もあります。骨と空気に対して影響を受けにくいのが特徴で画像の制度を高めており、診断には30分から1時間ほどを要します。(体内の水素原子核であるプロトンが軸となる)

炎症の診断に関係するT1とT2の画像について

磁気ベクトル方向であるz方向と回転方向であるxy方向により、原子核が元にもどうとする働きで、z方向が熱平衡状態に戻る状態を「縦緩和」や「T1緩和」とし、xy方向が熱平衡状態に戻る状態を「横緩和」や「T2緩和」とします。

1:T1強調画像でわかる事は「信号の回復時間」で、T1W1=縦緩和時間が短い、信号回復が速い
  =水分は低信号で黒く写る=脂肪、メトヘモグロビン、造影剤は高信号で白く写る

2:T2強調画像でわかる事「信号の減衰時間」を表す。T2W1=横緩和時間が長い、信号減衰が遅い
=デオキシヘモグロビン(急性期の出血)=低信号で黒く写る
  =水、関節液は高信号で白く写る

MRIによる画像診断学でわかる炎症について

【1. long T1(ロングT1)やlong T2(ロングT2)パターンよる診断】
良性腫瘍や急性炎症で示されるパターンでは、T2WIにて高信号を表示し、T1WIにて低信号を示すパターンで緩和時間延長を示す事が出来ます。

【2. medium T2(ミディアムT2)パターン】
悪性腫瘍や慢性炎症の可能性が高いとされる診断では、T2WIにて淡い高信号を表示しており、long T1、longT2パターンに比べて、水分が多くない事やT2値が長くない事を原因とします。

【3. STIR法(short TI inversion recovery)】
眼窩内病変、脊髄病変、炎症部位を検出しやすくする方法として使用されます。脂肪の縦磁化が、何も示さないnull pointによる時点で信号を収集し、脂肪と同程度のT1値を持つ組織により信号を抑制した撮影画像での診断です。

【4. 筋MRI検査】
筋肉や筋膜の炎症や筋肉内の浮腫、脂肪組織への変化や線維化と萎縮を確認する診断方法です。封入体筋炎で障害されやすい筋肉の萎縮の確認によって、筋生検の部位決定を示す効果的な方法です。

炎症による具体的な3つの症例

①「腱板損傷の症例」
板状の腱の部分で、肩の骨と腕の骨をつなぐ部分に関節液が入り込んだ様子を、MRI画像で確認できます。損傷をおこす損傷部分では、液体成分が多く存在するため、水分を強調しており、脂肪の信号を消す事で炎症による状態の画像を判別可能にしています。

「橈骨 骨挫傷による症例」では、骨挫傷が認められる橈骨(腕の骨)の部位を、炎症部位を描出可能なMRIによって、脂肪抑制のT2強調画像やT2強調画像により、レントゲンやCT画像よりも正確な画像判断を可能とています。

②「中殿筋・筋挫傷の症例」
T2強調画像や脂肪抑制のT2強調画像によって、広範囲な筋肉の炎症があるのが右臀部に鮮明に写っています。その上に、骨自体に損傷がない事がわります。

③「半月板や前十字靭帯損傷の症例」
脂肪抑制プロトン強調画像によって、膝のクッションとなる軟骨組織である半月板の断裂や、大腿骨と脛骨を結ぶ靭帯である前十字靭帯の判別も可能です。3.0Tの高磁場を最大限に活かす事により、高精細な画像や断面の厚さを薄くする事で、損傷の見逃しを軽減する事が出来るのです。

まとめ

MRIの撮影方法の豊富さによって、判別や所見の難しい炎症の状態を判別する方法としてはかなり有効的な方法とされています。また、炎症に限った事ではなく3次元画像や画素数の増量により、いろいろな診断にも活用されているのです。

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