最新のCT装置について

診断用機器

【はじめに】
スマートフォンなどに代表されるIT技術の進歩が目覚ましい現代。
この技術の進歩がさまざまな業界に影響を及ぼしています。もちろん、医療業界も例外ではありません。
そこで今回はCT装置に注目しながら、最新のAIが活用されたCT装置について話していきたいと思います。

【CT装置のこれまで】

CT装置は検査装置として脳出血や脳梗塞、がんなどのさまざまな疾患の診断と治療のために多く使われています。X線で人体を撮影し、そのデータの画像分析をコンピューターで行い、人体の輪切りの画像を映し出します。
35年近く前にCT装置が導入された当初は、1スライス撮影するのに3分ほどかかっており、頭部全体を撮影するには45分近く必要としました。
しかし、技術の進歩によって最新のCT装置では、3秒ほどで全身の撮影が可能になっています。実際の検査では30秒程度の時間をかけるので、1回の呼吸停止で必要な範囲の撮影ができます。

【MDCTとは】

短い時間で全身撮影が可能な最新のCT装置にMDCTがあります。
なぜ、短い時間で全身撮影が可能かというと、MDCTは従来のCT装置とは違い、X線を受ける検出器が1列ではなく、2列、4列、8列、16列、32列といった具合に検出器を多列化しているのでX線管球が人体の周りを1回転する間に複数のスライスを撮影することができます。よって撮影時間の短縮につながるのです。それだけではなく、広範囲を高い分解能で撮影することも可能です。
さらに、近年では高分解能多列検出器を搭載することで任意で縦、横、斜めの画像や高分解能の3D画像を短い時間で撮影できるようになっています。1回転の撮影時、0.5mmの高分解能で64枚の画像を得ることができます。
この64枚の画像を得ることができるMDCTのおかげで今まで入院を必要としていた冠動脈造影検査を患者さんの負担が少ない外来の短い時間で終わらせることも実現しました。

【AIの利用】

日本では他国と比べCT装置やMRIなどの普及率が非常に高くなっていますが、その画像を読影する放射線診断医が大幅に不足しているのが大きな問題になっています。
そこでこの問題を解決する方法としてAIの導入が試みられています。
ある医療機器メーカーではAIのディープラーニングやアクティブラーニングなどの機械学習を上手く活用することでCT画像やMRI画像から病変を見つけ出し、診断の補助を可能としています。
また、別のメーカーではCT再構成技術にディープラーニングを活用し、画像の再構成時間の短縮や被曝量の低減に取り組んでいます。今までだと再構成に約20分ほど要していましたが、この技術では約3分で終了できます。

【まとめ】

AIなどの技術によりCT装置やMRIなど画像診断に関する機器は着実に進歩を遂げています。しかし、その画像を見て診断を下すのは医師であり、人間です。問題点としては放射線診断医の不足だけでなく、膨大な画像を確認したり、主治医だけでは診断が困難なことがあったりするなど多くの課題があります。
まだ、これら諸問題の解決には至っていませんが、近い将来科学技術の発展により医師の負担が軽減されより良い画像診断ができる環境になることを願っています。

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