脳波計に用いられる校正電圧

生体現象測定記録・監視用機器

計測機器における校正は、測定対象物の実際の数値(入力)が計測後の数値(出力)でどう表されるのか確認する作業です。電位差(=電圧)を測定する脳波計では、予め数値が解っている電圧を用いて校正を行います。脳波計の基本事項を踏まえつつ、その校正について見ていきましょう。

脳波計の機能

1000億個以上の神経細胞から構成されている人間の脳。その活動は、無数の脳細胞が電気信号を伝達することで成されています。その際の電気的変化を電位差(単位:V)として捕捉し、その挙動を判別することによって脳の状態を知る手段が、脳波検査です。

検査には脳波計が用いられます。これは、被験者の頭部21箇所の所定位置に電極を取り付け、その組み合わせによって導き出される脳内の所定区間における電位差の時間的変化を測定していくという機器です。

測定結果は、縦方向を電位差・横方向を時間とした座標上に表されます。そうして得られるデータは概ね波形を成すため、脳波と呼ばれるわけです。

波形の状態を示す物理量には周波数と言う指標が用いられ、脳波についても適用されます。
周波数とは、1秒間で波の周期(振幅すなわち山1つ谷1つの組み合わせ)が幾つ発生しているかを示す指標であり、単位はHzです。

測定対象となる脳波には、4Hz以下のδ波・4~8Hzのθ波・8~13Hzのα波・13Hz以上のβ波といった種類があり、それらを含む周波数の範囲すなわち周波数帯域が予め解っています。その範囲外の周波数をノイズとして除去すべく、脳波計には周波数フィルターという機能が備わっています。

脳波検査における周波数帯域の下限は0.5Hzと定められており、その条件を満たすことがフィルターに求められるわけです。

脳波を描画するグラフは、電圧の周期的変化を波形に表すオシログラフであり、これを用いる際には感度が設定されます。感度とは、基線すなわち電位差0の座業から上下にどのくらいの長さを取れば何Vの電位差となるのかを示す尺度です。

脳波は極めて微弱な電気反応なので、10μV(1/100000V)レベルの小さな規模で観測されます。それに合わせて脳波計では、一般的な検査で使用される標準感度について、10μV/mm(グラフ縦方向1mmが10μV)として設定されます。なお、50μV/5mmの表記がなされる場合もありますが、尺度的に10μV/mmと同一と考えて差し支えありません。

脳波計の校正

上記のように、脳波とは脳活動に伴う電気反応を電位差の時間的変化として捉えているため、その校正においても電位差すなわち電圧が用いられることとなります。予め何μVか解っている電位差を校正電圧として測定し、これがどのような値で測定されるか確認するわけです。

脳波計の校正は検査前と検査後に実施するものとされ、標準感度の場合では校正電圧50μVが用いられます。方法としては、校正電圧の方形波を測定し、その結果得られた校正波形を確認するという形式が取られます。方形波とは、0を間に置いて同じ大きさの電圧が逆方向に交互して切り替わる形状の波形です。

標準感度における校正では、電圧が50μV→0V→-50μV→0V→50μV→(※繰り返し)という具合に変化する方形波を測定し、その結果となる校正波形を判別するという流れとなります。

校正波形に関して着目される点は、校正電圧の大きさと波形の示す時定数です。校正電圧の大きさに関しては、オシログラフに表された波形の縦方向の大きさから判断できます。時定数とは、電圧が50μV(又は-50μV)から徐々に0Vに減衰していく際、減衰前と比較して約37%の落ち込みに至った時間のことです。

時定数は、周波数フィルターの下限を決定するハイパスフィルターの設定値と、以下のような関係式で表されます。

▽ハイパスフィルターの設定周波数=1/(2π×時定数)

つまり、時定数によってハイパスフィルターで遮断と透過の境界となる周波数が定められるわけです。脳波検査で適用される周波数帯域の下限は0.5Hzとなるため、これをハイパスフィルターの設定周波数とすると、時定数は約0.3秒となります。

以上のように、標準感度における電圧の大きさや周波数帯域の下限域が適正なものとなっているのか、校正によって知ることができるわけです。

まとめ

脳波やその検査の基本を交えながら、脳波計が適切に機能するか確認する手段である校正について確認してまいりました。検査やその使用機器について知識を深めることにより、更なる医療体制のレベルアップが期待できると言えるでしょう。

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