麻酔器呼吸回路におけるリークテストの方法について

治療用機器

手術など、患者さんに多大な身体的負担を掛ける治療処置時に無くてはならない医療機器である麻酔器。安全に使用するためには、始業点検が欠かせないと言えるでしょう。その中の1つであるリークテストも重要な事項です。その方法について見ていきたいと思います。

麻酔器の構造

麻酔器は構造的に、ガス供給部と呼吸回路部という2つの装置に大別されます。ガス供給部で生成された麻酔ガスは、呼吸回路部内を循環しながら患者さんに吸入され、患者さんに麻酔状態をもたらすことになります。

ガス供給部では、酸素・亜酸化窒素・空気・揮発性吸入麻酔薬を混合し、麻酔ガスが作り出されます。麻酔ガスは、逆止弁やフィルタを備えた連結部を通して呼吸回路部へと送られます。

呼吸回路部各部の役割

呼吸回路部において麻酔ガスは、配管を介して患者さんの呼吸器官を含めながら装置内各部を循環することとなります。その主な経路は以下の通りです。

▼連結部→吸気弁→患者さんが装着するマスクおよび患者さんの呼吸器→呼気弁→呼吸バッグ→APLバルブ→カニスタ→再び吸気弁へ。以後吸気弁からカニスタに至るルートの繰り返し。

回路内の部位がそれぞれどのような役割を持っているのか確認しておきましょう。吸気弁および呼気弁は、回路内の循環逆流を防ぐ役割を持ちます。患者さんが息を吸う時には呼気弁が閉じ、息を吐く時には吸気弁が閉じる、という仕組みです。

患者さんが装着するマスクはY字型の配管(Yピース)に繋がっており、吸気側・排気側・患者さんの呼吸器官の三方向に交わる箇所となっています。呼吸バッグは、麻酔により衰えている患者さんの呼吸をサポートする人工呼吸器として働きます。

APLバルブは余剰麻酔ガスを回路外へ排出する部分です。患者さんの麻酔状態を維持するため、呼吸回路内の麻酔ガス濃度は容態に併せて適切に調整されなければなりません。そのために機能するのがAPLバルブと言えるでしょう。

カニスタとは二酸化炭素吸着装置です。呼吸回路は患者さんの呼気と麻酔ガスが混合した状態で内部が循環することになります。呼気には二酸化炭素が含まれるので、それを除去する目的でカニスタが用いられます。

始業点検におけるリークテスト

麻酔器の始業点検時に行われるリークテスト。それは、呼吸回路部内に部品の破損や接続不良などによる漏れが生じないかチェックするために行われます。あくまで点検を目的として行われるため、麻酔ガスは使用せずガス供給部からは酸素のみ送り込みます。

一般的方法としては、以下の通りとなります。まず、ガス供給部からのガス流量を0もしくは最小にします。次にAPLバルブおよびYピースの患者さん側を閉塞します。これで呼吸回路内が密閉された状態となるわけです。

その状態で、ガス供給部から酸素を5~10L/分の流量で呼吸回路内に送り、呼吸回路内の内圧が30cmH2Oとなるまで呼吸バッグを膨らませます。そして呼吸バッグを圧迫して内圧を40~50cmH2Oまで上昇させ、回路内に漏れが無いことを確認します。

その後、呼吸バッグの圧迫を解いて内圧30cmH2Oに戻し、酸素供給を止め30秒経過した時点で内圧低下が5cmH2O以内に収まることを確認します。次に、APLバルブを開き、内圧が低下することを確認します。

そして、ガス供給部から減圧されない酸素を流す酸素フラッシュを行い、流量が充分にあることを確認します。

以上が主な手順です。麻酔器の機種によっては、酸素流量100mL/分で、呼吸バッグ部を回路から閉塞して行う低圧回路系のリークテストが必要となる場合もあります。また、これらを自動で行う自動リークテスト機能を備えている麻酔器も開発されています。

まとめ

以上のように、麻酔器呼吸回路部の各部構造について確認しながら、リークテストの手順について見てまいりました。安全な医療体制のため、麻酔器をはじめあらゆる医療機器について適切に始業点検を行うことが重要と言えます。

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