どのようなときに手術台で抑制帯を使用するのか

治療用機器

【はじめに】
抑制帯と聞くと少し怖い感じがしますね。
「手術だけでも怖いのにその上、体を抑制されるなんて」
と思う方もいるかもしれません。また、自分はそういうことに関係ないと思われる方もいるかもしれません。しかし場合によっては普段問題がない人でも抑制帯をつけて手術する可能性もあります。
今回はどのような場合に手術台で抑制帯を使用するのかについて説明したいと思います。

【抑制帯を使用する場合とは】

まず手術において抑制帯を使用する最大の目的は、患者さんの安全を守るためです。
手術中に体を動かす可能性がある病状がある、あるいは服薬した薬によってそういう状態になる可能性がある、そしてすぐ身体拘束をして手術を行わないと患者さんの生命に関わる、という場合に抑制帯を使用する場合があります。

基本的に、「身体拘束予防ガイドライン」が日本看護倫理学会の臨床倫理ガイドライン検討委員会によって決められています。
ですので医師や看護師の勝手な判断で抑制帯を患者さんに使用することはできません。
「身体拘束予防ガイドライン」より定義されている「身体拘束の三原則」を下に引用します。

・切迫性
行動制限を行わない場合、患者の生命または身体が危険にさらされる可能性が高い(意識障害、説明理解力低下、精神症状に伴う不穏、興奮)

・代替性
行動制限以外に患者の安全を確保する方法がない(薬剤の使用、病室内環境の工夫では対処不能、継続的な見守りが困難など)

・一時性
行動制限は一時的であること

患者さんの容態や状態を良い方に(なるべく拘束しない方向に)する方法を検討して実施しても改善が難しく、手術を行う緊急性があるときに抑制帯は使用されます。

【せん妄とは】

身体拘束を患者さんにする可能性が高いものに「せん妄」というものがあります。
主に高齢になるほど起こりやすいのですが、普段は問題がなくても手術への恐怖から一時的にそのような状態に陥る人もいます。またアルツハイマーなど脳疾患のある患者さん、アルコールで問題を抱えた患者さんがアルコールを中断したときや、中枢神経系への薬物を摂取したときなどに、せん妄が起こることがあります。
せん妄とは、意識水準の低下が軽度~中程度あり、自分のいる場所や今の時間がわからなくなったり、思考のまとまりがなく他者がまったく予測できない言動などが起こってしまう症状です。

【まとめ】

なるべく抑制しないですむ事前のケア方法はないか、また様々な体勢や抑制帯を実際に医療関係者がグループで体験してみるなどの努力や研究は今も行われています。
患者さんの尊厳を守るために厳格な「身体拘束予防ガイドライン」が作られています。それでもどうにもならないとき、手術を行うため手術台の患者さんに抑制帯を使用することがあります。

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