脳波の計測は判定する要素が多い

生体現象測定記録・監視用機器

脳細胞の計測は、電気的活動を解明する事を目的としています。脳波計を記録する事で、てんかんや脳腫瘍、頭部外傷によるものや脳血管障害や脳炎などの診断をする事が出来ます。今回は、脳波の計測方法について紹介しましょう。

脳波の計測の役割

脳の働きによる活動は電気信号を発している事がわかっており、脳波計の測定を行う事により脳の働きの解明に役だっています。CT検査やMRI検査が主流となった今日では、脳波計の計測に取ってかわる事になりましたが、てんかんを専門とする分野においては脳波計の計測が主流となっているのです。

脳波の計測による判定

脳波を判定するには、周波数による数値と振幅の大きさ、波形の形状によって総合的に検討を行い、正常脳波や境界脳波および異常脳波に分類して診察の判定材料としています。

【1.正常脳波を判定】
必ずしも正常と判断するわけではないですが、異常波の程度や年齢や臨床症状を、経験によって相対的に判断しています。小児の場合は発育に個人差があるので、正常範囲も年齢によって計測値を判断します。15歳頃には成人に近くなり、40~50マイクロボルト、10ヘルツのα律動が増えてきます。

入眠の第一段階は、α波の周期が遅くなって不規則な徐波が増す事になります。睡眠第二段階では、α波が消失し低振幅速波は14~20ヘルツを示し、高振幅徐波の混在した状態になります。睡眠第三段階は12~14ヘルツ、睡眠第四段階では1~3ヘルツの高振幅徐波が示されます。覚醒期には眼球の運動が、水平方向に急速な動きを示します。これは、寝言や夢を見ているREM(レム)睡眠を表します。

閉眼状態の基礎律動は10ヘルツ前後のα波を示し、開眼によってα波からβ波に移行していきます。αブロッキングと呼ぶ事もあり、暗算する状況で生じます。

【2.異常脳波を判定】
正常範囲に該当しない特殊な波形の出現による場合を、異常脳波として判定します。周波数の異常は、基礎律動は10ヘルツ前後のα波によるもので、徐波は一定になります。δ波の出現は異常となり、限られた範囲内に出現すれば病的意義を示しています。

低振幅α波や150マイクロボルト以上の高振幅波では、限られた範囲内に出現すれば異常脳波であると判定します。やや幅の広い大きなとがった波の棘波(きょくは)は、スパイクと呼ばれて異常波の代表となります。13ヘルツ(毎秒20~30ミリメートル)以上の速波を示します。

鋭波の場合はスパイクよりも遅く、毎秒80~200ミリメートルの持続性があり、基本的には、スパイクと同等に考えられています。これらの波は、「てんかん」を示す場合の異常波を示します。

てんかん小発作では、3ヘルツ棘徐波結合を示します。てんかん大発作やミオクロヌス(間代性筋けいれん)発作では、連続した棘波に徐波が結合した多棘徐波結合となります。

脳波活動の特定部分の消失は病巣診断に活用され、完全消失は脳死の判定と判定されています。瘤波や紡錘波、薬物性速波等は、表在性の病変に影響されない場合の状態をレイジィ/アクティビティーと言います。機能障害が軽度の場合に、基礎律動に変化がなければ局所性脳病変を診断します。

【3.境界脳波を判定】
計測による診断が正常とは言えず、積極的に異常とも断定できない場合を言います。

疾患による脳波の特徴

脳腫瘍の計測では、限局性徐波が出現しやすくなります。大脳半球腫瘍や悪性度の強いものが、異常波が出やすくなります。頭部外傷による計測において、限局性の脳の損傷では有効になりますが、重篤なものにおいては徐波化が著しく現れて、てんかん波の発現で外傷性てんかんを合併する恐れがあります。

脳血管障害では、特異的な脳波は所見が困難です。てんかんにおける脳波所見では脳波検査は不可欠であり、棘波や棘徐波結合による異常を見る事が出来ます。

まとめ

脳細胞の計測にはいろいろな要素が不可欠であり、数値だけでなく年齢や病歴に加えて、診断する医師の経験値も加味して、総合的に判断しなければならないのです。

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