乳がんのMRI検査はうつ伏せで行う理由

診断用機器

MRIは磁場と電波で体内組織を検査する機器です。CTスキャンと違ってX線を使わないため、被爆を気にすることなく安心して診断できます。基本MRI検査は仰向けで行いますが、乳房造影MRI検査はうつ伏せで行う必要があります。本項では、MRI検査をうつ伏せで行う理由と注意点について解説していきます。

乳房造影MRI検査

MRI検査は乳がんの検査に対して非常に正確な画像を撮影することができ、マンモグラフィや超音波でも見えない乳がんを発見することができます。通常のMRIと違いうつ伏せ(腹臥位)で撮影する必要があり、乳房の位置に専用台(コイル)を設置し、乳房を専用台の間に入れて撮影します。

乳がんは乳管上皮から発生することが多く、乳房が自然に垂れる状態を維持することで、乳頭との位置関係や乳管に沿って広がる病変の観察がしやすくなるわけです。
胸壁がコイルで固定されるので呼吸に支障が出ないようになっていますが、撮影が完了するまで30~40分近くかかります。うつ伏せの患者にかかる負担をできるだけ軽減させる工夫が求められると言えるでしょう。

造影剤

CT検査において、鮮明な撮影をするための造影剤を体内に注射しますが、MRI検査は造影剤なしでも詳細な検査が可能です。しかし、乳腺のMRI検査の場合では、乳腺と腫瘍の画像は酷似しており造影剤を使用しなければ診断が困難となります。少量(10cc未満:体重10kgあたり1cc)なので、注入時の痛みはありません。なお、体質・持病・妊娠期間中などの関係から造影剤が使えないこともあります。

MRI検査を受けられない方・受けられる前の注意

放射線を使わないMRI検査ですが、使用中患者の身体は強力な磁場に置かれることとなります。その影響により、ペースメーカーのような電子機器は壊れてしまいます。厚着、メイクを施した状態、貴金属を付けた状態などでの撮影も、ケガまたはやけどのおそれがあるため禁止です。また2021年現在、コロナウイルスの影響によりほとんどの方が不織布マスクを常用されていますが、中にはノーズピースに金属が用いられている製品もあります。そのようなマスクを着用している場合、撮影前に外してもらうようにしましょう。

妊婦の方でも、器官形成期にあたる16週目未満(妊娠期間の最初の1/3)の期間の検査は、安全性が保証されていませんので注意が必要です。

まとめ

MRIは症状により体制を変えて撮影を行うことが可能です。近年では水分子の拡散状態を撮影できる拡散強調画像により、造影剤を使用せず検査が行える技術の研究も進んでいます。トンネル状の密閉空間で撮影を行うため、閉所恐怖症の方はMRIではつらい検査になってしまいますが、患者を取り囲むドームが取り払われたオープン型のMRIも登場しています。MRIはマンモグラフィや超音波検査に比べてコストがかかりますが、安全性はもちろん、機器が最新になるにつれランニングコストも軽減され、検査にかかる時間も短縮されており、今後の発展に目が離せない分野と言えるでしょう。

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