CT装置使用に伴う感染対策

診断用機器

身体内部の映像を撮るCT装置は、使用において患者さんとの接触が避けられない機器に相当します。何らかの感染症を患っている患者さんに検査を行う際には、感染対策を確実に講じておかねばなりません。どのように検査を実施するのが望ましいのか、見ていきたいと思います。

CT装置の仕組み

検査を受ける患者さんの身体特定箇所について、360°方向からX線を透過させ、そこから検出されるデータをコンピューター解析し、体内を画像化する医療検査機器。それがCT装置です。

CT装置は、大きく分けて3種の装置により構成されています。X線照射とデータ検知を行う円環状のガントリ。患者さんが横臥する寝台であり、スライド機能を持つクレードル。そして装置全体をコントロールする中枢部に当たるコンソール。
以上の3つが、CT装置を構成する機器です。

ガントリ内部のX線管球と検出器が、患者さんの周囲を高速回転してX線照射を行い、それに連動してクレードルがスライドする形で検査が進行します。この動作によって、患者さんの身体内部が3次元的に画像解析されるわけです。

CT検査の形式上、上に乗って横になるクレードルは患者さんと接触し、ガントリは患者さんに近接することとなります。そのため、何らかの感染症を発症している患者さんの検査を実施する場合、一般的な感染対策に併せて、CT装置自体への汚染防止対策も取らなければなりません。

検査における感染防止対策

何らかの感染症について陽性を示している患者さんのCT検査について、どのような実施方法が考えられるでしょうか。日本診療放射線技師会が提唱するガイドラインの内容を加味しながら、見ていきたいと思います。

まず、検査を行う前準備として、患者さんにN95マスクを装着していただきます。そして、検査室までの移動経路に通行制限を設けた上で、患者さんの搬送を行います。これらは、他の患者さんや院内職員などへの感染リスクを減少させるための措置となります。

検査に携わる技師は、事前に手洗いと消毒剤を用いた手指消毒を行い、手袋・サージカルマスク・ディスポエプロンを身に付けます。空気感染および飛沫感染のリスクがあるタイプの感染症では、N95マスクの使用がより有効です。

患者さんが横になるクレードルにはディスポシーツを敷き、患者さんの身体が直接機器に接触することのないよう対処します。接触感染リスクが高いケースでは、その他補助具など患者さんに触れる可能性のある箇所も、ビニールなどで被覆します。

これら準備が終了した後、患者さんに入室していただきます。そしてクレードル上に横になっていただき、検査時の体勢を整えるポジショニングを行います。ポジショニングは基本的に患者さんへの口頭指示によって行い、極力身体に触れないようにします。準備が整った後、検査に取り掛かります。

ポジショニング時の補助など、その他やむを得ず患者さんに接近および接触した場合には、事後直ちに手袋を消毒した後、新たな手袋・マスク・ディスポエプロンに装着し直しましょう。

検査が終了し、患者さんが退室された後、室内およびCT装置の後処理を行います。クレードルに敷いたディスポシーツやその他被覆に用いたビニールを取り除き、MDボックス(感染性廃棄物収納容器)に投入します。

接触感染リスクがある感染症の場合では、ディスポシーツやビニールの表面に触れず、表面部を内側に裏返すようにして取り外すことが重要です。

カバー類の取り外しおよび破棄が終了した後、作業時に着用していた手袋・マスク・ディスポエプロンをアルコール消毒しながら取り外し、新しいものへと取り替えます。

その後、CT装置の清拭および清掃を行います。その際、消毒液および洗浄剤のスプレー噴霧を行うと、液剤が装置内部の回路を腐食させ故障の原因となってしまう恐れがあります。これを避けるため、消毒液および洗浄剤は布やシートに含ませて塗布し、その後乾いた布でカラ拭きすることを基本とすると良いでしょう。

これら後処理と並行して、室内の換気を行い空気感染リスクの軽減措置を取ることも重要です。また、感染症を患われた患者さんの検査は、可能な限り時間帯を最後に実施することが感染予防の観点から有効と言えます。状況により判断に迷う場合は、確認を取りましょう。

まとめ

以上、CT装置の構造的基本を踏まえながら、感染症を患っている患者さんに対し検査を行う際の感染予防対策について確認してまいりました。感染症は種類によって異なる特徴を有します。その性質に合わせて適宜、有効な防疫対策を追加した上で検査に臨むことが重要です。

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