ファイバースコープの安全運用に求められる整備

診断用機器

ファイバースコープは外からは観察できない、ヒトの体内を調べるための医療機器ですが、精密機器ゆえのデリケートな物でもあります。ファイバースコープを適切に運用するには、常日頃のメンテナンスとこまめな動作チェックが必要不可欠です。

ファイバースコープの仕組み

ファイバースコープが登場する以前は、胃カメラのようなアームに小型カメラを装着する内視鏡で検査を行ってきましたが、機器が大きく、患者の負担が大きいというデメリットがありました。

ファイバースコープは光ファイバーを使い光源を体外から送り込むことが可能になり、外から撮影を行えるようになりました。これにより機器全体の小型化を実現し、直径2.4mm~8.5mmのカメラヘッド(先端)で消化器だけでなく胆道や膵臓などまで検査できる極細の内視鏡が誕生しました。

ファイバースコープの整備

内視鏡のメンテナンスは臨床工学技士が行いますが、臨床工学技士のいない施設では看護師や臨床検査技師が行っています。ファイバースコープを用いた内視鏡検査は、感染対策、介助、鎮静患者の観察・記録、医療機器の操作、保守、点検、薬剤の管理、採取された検体の処理等々、多くの業務項目があります。近年の内視鏡技術進歩は目まぐるしく、高リスクの手技を必要とするケースを想定するならば、各工程を専門スタッフで分担するのが安全です。

医療用のファイバースコープは、人体を検査するもので特に念入りにメンテナンスする必要があり、日頃の整備点検と検査前後の点検が必須になります。

日本臨床工学技士会の内視鏡業務指針には「日常点検」「定期点検」の実施を行うよう記載されており、医療機器メーカーの取扱説明書にも「使用前点検」および「定期点検」に関する項目がありますが、基本的に「日常点検」と「使用前点検」の内容は同じであり実施内容に変わりはありません。

日常点検

操作パネル・電源・モニタに破損、変形、損傷がないか十分に確認し、スコープ先端に亀裂・しわ・ピンホール、レンズの破損などがないか、レバーを回すことでなめらかな動作と正確な彎曲角度が得られるかの確認を行います。

定期点検

メーカーの取扱説明書に記載されている点検を行い、メーカーに点検委託した際は点検報告書を保管しておきましょう。異常が発見された場合は速やかに修理に出しましょう。

使用後の洗浄

ファイバースコープを患者に使用後ただちに洗浄する方法に「ベッドサイド洗浄」があります。付着した体液を濡れたガーゼでふき取った後に、200ml以上の酸素系洗浄液でスコープ内を洗浄します。

ベッドサイド洗浄が完了したら、全自動洗浄機で残りの工程を行います。自動洗浄機は非常に便利なメンテナンス機器ですが、感染症対策や機器を末永く使うためにベッドサイド洗浄は必ず行うようにしましょう。

まとめ

ファイバースコープを安全に運用するには、日常の点検と使用後の速やかな洗浄が大変重要になります。点検後は機器ごとにメンテナンスの内容を詳細に記録しておくことで、その後のトラブルを未然に回避することができます。

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