手術台の昇降動力となる電気の扱い方について

治療用機器

1960年代以降、吸入麻酔薬の改良、普及によって引火、爆発の危険が取り除かれた手術室において、医療、計測機器への電気の導入が大幅に進みました。手術台においても、動力などに電気が用いられています。ここでは昇降などの動力である、電気を用いる上での注意点を述べていきます。

手術台の種類と仕様

手術台は、手術のしやすさとともに、患者にとっては安全であることが不可欠です。このようなことから、さまざまな手術症例に用いることができる万能型手術台の改良が重ねられ、手術手技の分化に伴い専用型手術台や併用機器の開発も行われてきました。

手術台の基本的な作りは、患者を横たえるテーブルトップ、これを支えるコラム、ベースから構成され、テーブルトップは昇降をはじめ、屈曲・伸展などができるようになっています。

動力の発展

以前はテーブルトップの昇降、背板の屈曲、伸展、縦横転などを、手回し、または足踏みで行っていましたが、現在は油圧電動式、電動制御方式にかわってきました。

従来は、テーブルトップの運動の種類ごとにモーターをつけていましたが、そのことによって手術台が重くなり、X線を使用するうえで障害になっていたため、1つのモーターで油圧ポンプを動かす油圧式が普及しました。

また、電気制御を応用したコンピュータの導入により、手術台に複雑な体位を記憶させることや、ボタン1つで自動的にもとの水平位に戻すことができるようになりました。

電動手術台における危険

電気を動力としている以上、コードをつながないと動きませんし、停電やコードの断線でも機能しなくなります。また、断線は、コードが屈曲をくり返すコントロールボックス付近で起こりやすいことがわかっています。

特に注意しておきたいことは電動部分が動き出して止まらないケースです。リモートコントロールの押しボタンが血液などで汚れ、元に戻らないときや、スイッチの故障、コードのレアショートで生じやすいと言われています。

また、覆布に隠れたリモートコントロールスイッチに人が寄りかかり、モーターが回り出したという事例もあります。これらの誤動作を避けるため、押しボタンを2個同時に押さなければ動かないようにしたものもあります。

現有する手術台について、緊急に電源を絶つスイッチはどこにあるのか、どのコードを抜けば電源をオフできるかなどについて、日頃から留意しておく必要があります。

手術台と電気の問題

電動の手術台では、洩れ電流によるマクロあるいはミクロショック、モニタ機器に対する交流障害防止への配慮が必要です。洩れ電流を少なくする絶縁変圧器(アイソレーショントランス)の採用、6~24Vの電源をつくり手術台に供給する低電圧方式や、充電式電池を内蔵したコードレス方式などの工夫がされ、洩れ電流10μA以下のものが実用化されています。

まとめ

手術台は昇降をはじめとした動力の電気化で目覚ましい発展を遂げてきました。しかし、電気ならではの注意点もあります。手術にあたる前に確認しておきたいところです。

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