人工呼吸器の設定時に必要な1回換気量とは

治療用機器

空気中から体内へ酸素を取り込み、二酸化炭素を体外へ排出する呼吸。その呼吸が困難な状態にある際、使用される医療機器。それが人工呼吸器です。人工呼吸器を使用する前には、1回換気量を設定する必要がありますが、それは何を意味するものなのでしょうか。見ていきましょう。

呼吸について

人間が生きていく上で不可欠な運動となる呼吸。これによって人体を構成する細胞の維持に欠かせない酸素の取り込みと、不要物に相当する二酸化炭素の吐き出しが行われます。そんな呼吸についてメインの働きをなす臓器が肺です。

肺は、膨らむことによって外気から空気を吸い込み、縮むことで内部の空気を外へ放出します。その動きに伴って酸素の吸収と二酸化炭素の排出が行われることとなります。

肺の拡張と収縮は、横隔膜を主とした肺周囲に位置する筋肉の働きによってなされます。

人工呼吸器の役割

何らかの疾病によって、横隔膜など肺を取り巻く筋肉の働きが低下すると、それと連動して肺への空気の出し入れである呼気および吸気も弱まります。これを回避するためには、本来横隔膜などが担う機能を何らかの形で補わなければなりません。

それに対応する医療機器が人工呼吸器です。

現在、人工呼吸器は気道内陽圧式という方式を用いたタイプが主流となっています。これは、機械の力で患者さんの肺に酸素を送り込む方式に相当します。
大まかな構造としては、吸気側配管を通して酸素を含んだガスを患者さんの鼻や口に送り、吐き出される二酸化炭素は呼気側配管を通して外部に放出される仕組みとなっています。

これによって、本来の呼吸のペースに合わせて、酸素を含んだガスを周期的に送り込むことにより、肺を膨らませて酸素を吸収させるというわけです。ガス供給に間隔を置くことで、肺の収縮期間を確保し、二酸化炭素の排出が促されます。

1回換気量とは

人工呼吸器による呼吸は、人間が本来行う様式ではありません。患者さんにとっては、外部からの圧力が肺に掛けられる形となります。そのため、酸素ガスが強い力で送り込まれるなどした場合、肺にダメージを与えてしまう怖れがあります。

そのため、人工呼吸器の使用に当たっては、患者さんの呼吸器官の条件に合わせた設定が必要です。

その設定内容の1つとして、1回換気量が挙げられます。これは、呼吸1回すなわち吸気と呼気のそれぞれ1回ずつの1組において、肺や気道に出入りする空気量を意味しています。この1回換気量を、患者さんの特徴に合わせて設定することにより、1回の呼吸に適切な量の酸素ガスが供給され、肺を傷付けるリスクが避けられるわけです。

一般成人の1回換気量は安静時の場合、以下のような式で求められます。
 1回換気量(mL)=理想体重(kg)×6(mL/kg)

上記式中の理想体重に関しては、男女別に以下の式から求められます。
 男性の理想体重(kg)=50+0.91×(身長(cm)-152.4)
 女性の理想体重(kg)=45.5+0.91×(身長(cm)-152.4)

まとめ

以上のように、呼吸および人工呼吸器の基礎的部分を踏まえながら、人工呼吸器の設定で欠かせない1回換気量とは、呼吸1回で吸収・排出される空気量を指すことを確認いたしました。人工呼吸器の設定は、使用される患者さんの安全を保護する上で欠かせない要素です。そのため、患者さん個人に合わせた適正値を用いることが重要と言えます。

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