全身麻酔のメカニズムについて

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【はじめに】
手術や検査など、人体に侵襲的なことを行うと、痛みや恐怖をはじめとしたさまざまなストレスがかかります。それを防ぐためには「麻酔」は不可欠です。
麻酔をかけることにより痛みをなくすことや、意識をなくすことができますが、麻酔薬の副作用や合併症をよく理解し、かつ安全に行わなければなりません。
麻酔をかけるということは、それ自体が身体にとってストレスになることもあり、またさまざまな生理的変化を引き起こしたりもします。
ここでは、麻酔の種類と生体への影響、麻酔科医の役割などを見ていくことにしましょう。

【麻酔の種類】

麻酔には、大きく分けて「全身麻酔」と「局所麻酔」があります。
・全身麻酔
全身麻酔は、吸入麻酔薬を気化器で気化させ亜酸化窒素(笑気ガス)と一緒に肺から呼吸させることにより吸収させたり、麻酔薬を静脈注射することにより体内に入れ、脳組織に作用させることにより意識を喪失させます。

・局所麻酔
局所麻酔とは、リドカインやブピバカイン、ロピバカインなどの局所麻酔薬を使って、局所の神経終末を麻痺させたり(局所浸潤麻酔)、太い神経を麻痺(伝達麻酔・超音波ガイド下神経ブロック)させたりして、一定の部位に限局して麻酔をかける方法です。
また、脊髄周辺に麻酔薬を作用させて腹部~下半身の知覚を麻痺させる脊髄くも膜下麻酔や、多椎間にわたる硬膜外麻酔は手術麻酔に多く用いられます。
なお、脊髄くも膜下麻酔は脊椎麻酔とも呼ばれたりします。

【麻酔科医の仕事】

麻酔といえば、皆さんは「眠ったままで痛みもなく、何も知らないうちに手術が終わっている」ものと多くの人が思われているかもしれません。
しかし、ここでちょっと考えてみてください。麻酔科医はどのようにして患者さんを眠らせたり、痛みを取ったりするのでしょうか。
ただ眠っているだけでは寝返りもしますし、痛いことがあれば目を覚まします。もし、手術中に患者さんが動くようなことでもあれば、大切な血管や神経を傷つけたりして非常に危険です。
また、痛みで目を覚ますようなことがあれば、その苦痛は計り知れません。
そのため、全身麻酔では患者さんが動いたり痛みを感じることがないよう、眠りとは異なる深い麻酔状態にしておく必要があります。ところが、麻酔で動くことができなくなると、呼吸をするための筋肉の働きも衰えて、患者さん自身では呼吸することができなくなります。そのため、麻酔科医は患者さんの気管に管を入れて、人工呼吸が必要となってくるのです。この状態を「呼吸管理」と呼んでいます。

【まとめ】

全身麻酔の安全性からいうと「麻酔から覚めないとどうなるの?」という心配の声もあります。「麻酔から覚めない」と言われる原因の多くは、手術中に大量出血や心臓病などのために血圧が下がってしまい、脳に血液を十分に送ることができなくなることが原因と考えられています。
そのため、麻酔科医は常に患者さんの血圧・心拍数などの生理状態を観察し、異常が見られれば、輸液・輸血・薬剤の使用により、血圧の変動が最小限となるよう管理を行っているのです。

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