麻酔器の仕組みと原理

生体現象測定記録・監視用機器

【はじめに】
医療ドラマなどの手術シーンで、手術台に乗せられた患者役の俳優さんにマスクがかけられるシーンを見たことはありませんか?
また、ご自身が実際に手術を受けられることになって、あのマスクをかけられた経験をお持ちの方もおられるのではないでしょうか。

あのマスクから出てくる気体には、麻酔の効果を持つ成分が含まれています。
この麻酔ガスを患者様に吸い込ませ、併せて呼吸の管理を行う目的で使用される医療機器のことを「麻酔器」と呼びます。
今回は、麻酔器の仕組みと、麻酔器を用いて行われる全身麻酔の原理についてご紹介します。

【麻酔器の仕組み】
全身麻酔に使用される麻酔器は、大きく分けるとガス供給部と呼吸回路部という2つの部分から構成されています。
ガス供給部では気化された麻酔薬に酸素、亜酸化窒素が混ぜられて麻酔ガスが作り出されます。
この麻酔ガスは、呼吸回路部を経由して患者様へと供給されます。

呼吸回路部の役割は人工呼吸といえます。
全身麻酔中は筋肉が弛緩するので、自力で呼吸を行うことが難しくなります。
そのために人工呼吸が必要となるのですが、この役割を担っているのが呼吸回路部なのです。
呼吸回路部は麻酔ガスを患者様へ供給するとともに、呼気を循環させて呼吸の管理を行っているのです。

【麻酔ガスはどのようにして効くのか?】
麻酔器から患者様の身体の中へ入ってきた麻酔ガスの成分は、肺を経由して血液中に吸収されます。
血液中に吸収された麻酔成分は、血流によって脳へと運ばれて中枢神経系を麻痺させ、その結果として全身麻酔の効果が得られるのです。

しかし、実際のところ、麻酔ガスが効く原理というのは詳しく分かっていません。
血流によって脳へ運ばれ、そこで作用するということまではは分かっているのですが、脳の中でどのようなメカニズムによって作用するかがよく分かっていないのです。
もちろん、数多くの研究がなされ、いくつかの仮説が提唱されてはいるのですが、今のところ明確な結論は出ていません。

なお、麻酔ガスには、麻酔薬を静脈へ直接注入する場合に比べて、麻酔が効き始めるまでの時間が長くかかるという短所があります。
その一方で長所としては、麻酔器を使用することにより人工呼吸の管理が非常に行いやすくなるということがあります。
このため、実際の現場では静脈麻酔で麻酔の導入を行った後、麻酔の維持は麻酔器を用いて麻酔ガスで行うという方法が多くとられています。

【まとめ】
全身麻酔を行う場合には、専門の麻酔科医がその管理を担当します。
麻酔科医の役割は麻酔をかけたり、手術中の患者様の状態をチェックしたりすることだけではありません。
手術の前や、手術が終わった後の患者様の状態に目を配り、必要な処置を行うのも麻酔科医の役割です。
全身麻酔を受けるにあたって不安なことや疑問なことがあれば、担当の麻酔科医や看護師に相談するようにしましょう。

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