鼻から入れるファイバースコープ~経鼻内視鏡について~

生体現象測定記録・監視用機器

はじめに

以前は、上部消化管(食道、胃、十二指腸)の内視鏡検査といえば、口からファイバースコープを入れるタイプ(経口内視鏡)が主流でしたが、最近では技術の進歩によってより細い内視鏡が開発され、鼻から入れるタイプの内視鏡(経鼻内視鏡)が使用されることも多くなってきました。
このタイプの内視鏡は、舌の付け根やのどに接触することがないので、経口内視鏡と比較して吐き気や不快感が軽減され、検査を受ける患者さんの負担を軽くすることに役立っています。
今回は、この経鼻内視鏡の特徴について説明します。

経鼻内視鏡の特徴

経鼻内視鏡の特徴を経口内視鏡と比較しながら見ていきましょう。

細さ

内視鏡の太さを見てみると、一般的な経口内視鏡が8ミリから9ミリ前後であるのに対して、経鼻内視鏡の場合は5ミリから6ミリ前後と半分近くまで細くなっています。
この細さのおかげで、鼻から内視鏡を挿入することができるようになり、患者さんの負担を軽くすることが可能になりました。

麻酔

経口内視鏡では、のどへの局所麻酔のほか、患者さんの負担を減らすため鎮静剤を使うことがありますが、経鼻内視鏡では鎮静剤を使うケースが少なく、多くの場合、鼻腔への局所麻酔のみで検査を行うことができます。
このため、麻酔事故のリスクが少なくなっています。
また、麻酔が覚めるのを待つ必要がありませんので、検査終了後、異常がなければ患者さんはすぐに帰宅することができます。

心拍や呼吸への影響

経口内視鏡の場合は、検査中、特に内視鏡が食道の入り口を通過する際に心拍数の増加や血圧の上昇がみられる患者さんが多いのですが、経鼻内視鏡では心拍数にも血圧にも大きな変化は見られないのが一般的です。
この点においても、患者さんの負担が軽くなっていることがわかります。

会話

経口内視鏡の場合、検査中に会話をすることができません。
これに対して、経鼻内視鏡を使えば、検査中でも患者さんと会話することができ、患者さんの不安を軽減したり、リラックスさせたりする効果が期待できます。

最後に

内視鏡の「細さ」は、患者さんへの負担を減らすという点で経鼻内視鏡の大きな強みでもあるのですが、逆にこの細さという特徴は「画質」という内視鏡の性能に影響を及ぼしてしまうことで経鼻内視鏡の弱点にもなりえます。
一般的に、画質の面では経鼻内視鏡は経口内視鏡よりも劣りますし、操作性なども併せて考えれば、観察力という点では経口内視鏡のほうに分があります。
また、組織の採取に関しても、経口内視鏡のほうが確実ですし、ポリープの切除、摘出といった高度な処置も経鼻内視鏡では行うことができません。
このため、通常の検査に要するものとしては十分であっても、より精密さや高度な処置を求められるようなケースでは、経口内視鏡を使った再検査が必要になることもあります。
そうなると、場合によっては、はじめから経口内視鏡を使ったほうが、結果的に手間・時間・負担が少なくできるということも起こりえるわけです。
このように、経鼻内視鏡には多くの長所がありますが、経口内視鏡のほうが優れている部分も少なからず存在しています。

ピックアップ記事

関連記事一覧