脳波計の仕組みについて

生体現象測定記録・監視用機器

脳波計はハンス・ベルガーによって、1924年に考案された脳内の活動を測定するための機器です。最近では、MRIやCTといった画像診断技術の向上により、脳波計が使われる機会は以前と比較して少なくなってきていると言われます。しかし、てんかんの検査や脳死の判定において脳波計は今でも重要な役割を担っています。今回はこの脳波計の仕組みについて見ていきましょう。

何を測っているのか?

ヒトの脳内に存在し、情報のやり取りを行うニューロン(神経細胞)の数は、数千億にも及ぶと言われています。情報はニューロンの内部に加えて、ニューロン間でもやり取りされます。やり取りの仕方については、前者(1つのニューロン内)では電気的な方法、後者(ニューロン間)の場合では神経伝達物質を用いる化学的な方法となっています。

順序立てて見てみましょう。
あるニューロンから、次のニューロンとの間隙(シナプスと呼ばれます)に伝達物質が放出され、それが受け手側のニューロンにとらえられると、受け手側のイオンチャンネルと呼ばれるイオンの通り道が開きます。すると、受け手側のニューロンでは細胞内外でイオンの出入りが発生しますので、その結果として電気的活動が生じます。

脳波計で測定されるのはこの電気的活動であり、シナプスの後ろ側にあるニューロンの活動であることから「シナプス後電位」と呼ばれます。

測定の仕組み

1個のニューロンにおけるシナプス後電位は、非常に微弱なものです。このため、脳波計が測定しているのは、数百万個のニューロンの電位を集めたものと考えられます。と言っても、頭皮上に置かれた脳波計の電極がキャッチする電位は、数μVないし数百μV程度で、まだまだ小さなものです。

「脳波」として検査や研究に用いるためには、さらに大きな信号にしなければなりません。
そこで脳波計では、電位を増幅するための「差動増幅器」と呼ばれる機器が大きな役割を果たします。

この差動増幅器に入力される成分のうち、「同相信号」と呼ばれるものは信号同士が相殺されることで出力が抑制される一方で、「逆相信号」と呼ばれるものは信号同士が強め合うことで出力が増幅される仕組みになっています。
そして、脳波計に入力される信号成分のうち、雑音は同相信号として、脳の電気活動は逆相信号として処理されます。そのため、結果として脳の電気的活動に伴う成分が優先的に増幅され、検査や研究のために用いることのできる形で表されるようになるのです。

まとめ

ここまで、脳波計は脳のどのような活動を測定しているのか、そしてどのような仕組みで医師や医療関係者、研究者が解読できるレベルにまで処理されるのかを見てきました。
このように処理された脳内の電気的な活動は、横軸に時間、縦軸に電位をとった記録紙上に「脳波」として表されるわけです。

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