ペースメーカーの基本設定と心電図の関係について

生体現象測定記録・監視用機器

体全体の栄養やエネルギーを血液に含ませて送り出す心臓は、活動をする為に電気的な命令を発令しています。通常の健康体であれば電気的な命令を発する事ができますが、適切な機能を失っている状態の人に必要とされるのが、ペースメーカーです。そのペースメーカーの基本設定と心電図の関係について紹介しましょう。

ペースメーカーの仕組み

心臓の働きを監視する為のものであり、あるいは心臓の働きを補助する為の機能も行っています。心臓のリズムを整える場合には、本体から電気的な命令を発して心臓の働きを助けています。

患者の症状や年齢によっても使用する機種は異なりますが、次の2つについて説明します。
1.「シングルチャンバの場合」
本体から使用するリード線は1本で、心房又は心室のいずれかを監視する役割です。

2.「デュアルチャンバの場合」
2本のリード線を使用して、右心房および右心室に留置しています。洞結節から送られる信号が遅い状態の患者や、房室ブロックなどの問題がある場合は、心房から心室への電気的な伝導に異常を示す場合などに使用されます。収縮リズムのズレがある場合には正常な収縮タイミングを回復させる事もできます。

心電図の関係と基本設定

心電図の監視の役割を担っているので、異常がある場合の適切な対応が必要です。

部位の表示

機器本体が電気的に刺激する部位を示す3つの頭文字によって指示の設定を表現しています。

1.心臓を刺激する部位のペーシング部位にあたる1番目で、Aは心房を表し、Vが心室になり、Dの場合は両方です。

2.次に刺激を関知するセンシング部位で、Aが心房でVが心室、Dが両方でOが感知機能なしの場合です。

3.最後が作動様式にあたり、心臓の興奮を制御する場合をIで示して、Tが心臓の興奮を感知し同期を行いますが現在は使用されていません。Dの場合は、刺激の抑制と同期を併せ持ち、Oの場合は、感知機能なしの場合です。

ベーシングモードの設定

1.「AAI」
先ほどの頭文字の組み合わせで示しており、心房のみでペーシングとセンシングの設定が行われて、心臓の自発収縮を本体が感知してペースメーカーに対する刺激が抑制される事になります。洞不全症候群で適応となっています。

2.「VVI」
同じように設定を心室だけで行い、機器が心臓の自発収縮を感知すると本体に対する刺激が抑制されます。徐脈性心房細動で適応となっています。

3.「VDD」
心室のみの設定となり、心房と心室の両方でセンシングをします。作業指示は心房収縮の感知に対してであり、それに同期して心室のペーシングを行う事になり、心室収縮を感知した場合には、機器の刺激が抑制されるようにしています。洞結節の働きが正常な場合の房室ブロックに適応します。

4.「DDD」
心房と心室の両方で設定が可能になるモードで、心房と心室の収縮状況に応じて作用して刺激を出します。

心電図の観察

波形の観察に注意すべき事です。

ベーシング不全

設定の心拍数以下であっても本体から刺激はあるが、心電図ではスパイクの状態を表し、心室の収縮がないのでQRS波が消失した心電図となります。原因としては本体の故障やリードの異常がある場合に起こり、ズレや断線なども考慮します。

センシング不全

P波やR波の信号がうまく感知されない場合に起こり、感度が良すぎる場合には、オーバーセンシングが生じます。また、センシングできなくなった場合には、アンダーセンシングの状態になります。これに対する処置としては、感度を下げる事で可能な場合もありますが、場合によってはジェネレーターの交換を考慮します。

オーバーセンシングの心電図では、間違った電位を感知するとベーシングの間隔が延長した状態で表します。

アンダーセンシングの心電図では、自己心拍を感知できない状態となり余計なベーシングをした波形が出るようになります。

まとめ

ペースメーカーの設定は、患者によって異なるので、適切なモードを選ぶ必要があります。心電図の監視の役割もありますが、時には、その本体の異常を示す心電図との関係もあるので、使用する場合の設定や注意事項を把握しておく事です。

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