心停止の時の心電図と除細動器を使う必要性

生体現象測定記録・監視用機器

日本国内で1日約200人と数多くの人が心臓突然死で亡くなっています。その際に、救命に有効なのが除細動器(AED)です。AEDが自動判定して有効かどうか判断するので安心して使えるようになっています。今回は除細動器の役割と、心電図の解説をしていきます。

AED(除細動器)の役割

世間一般的に「AEDは心停止している人に電気ショックを与え、心臓を動かす」という認識が多いようですが、正確には違います。

・停止している心臓を動かす事はできない
・心静止や無脈性電気活動など対応できない心停止がある
・胸骨圧迫とセットで行うのが不可欠

AEDなど除細動器の役目は、興奮して暴れている電気信号や誤った電気信号を整えて正常に戻し、ポンプとしての役目を復帰させるためにあり、完全に止まっている状態の心臓を元に戻す事はできません。

心停止とは必ずしも、「心臓の活動が完全に止まった」事を指すわけではありません。心停止のタイプにも幾つか種類があり、いずれも「心臓がポンプとしての役目を果たしていない」状態の事を示します。「動いてはいるもののポンプとして機能していない」という容態も心停止のカテゴリに含まれる事となります。

心電図波形から見る心停止の種類

心臓から血液が送られない状態には主に4種類が挙げられ、それぞれ心電図波形に現れる特徴から判別する事ができます。

心電図で見た時、心臓の動きを示す波には幾つかの名前があり、それぞれP波、QRS波、T波と呼ばれています。心臓には4つの部屋があり、P波は心房(上2つの部屋)、QRS波は心室(下2つ)、T波は収縮が終わった後に心臓外側に広がる信号の事です。

心室細動(VF)

P波、QRS波、T波の区別がなく波が不規則に上下している状態で、高さや幅もバラバラな状態。たいてい「心臓が痙攣している」と表現されます。細かく震えているためポンプ機能を果たしていません。心臓突然死の原因の多くはこの心室細動だと言われています。

AEDなどの除細動器が有効で一刻も早い処置が必要です。

無脈性心室頻拍(PVT)

P波が見られず、幅広いQRS波が120~250/分で規則的に繰り返しており、心電図上では確認できるが、脈拍を触知できない状態。AEDなどの除細動器が有効で緊急を要します。

無脈性電気活動(PEA)

心電図上、心室細動や無脈性心室頻拍以外の波形は確認できるものの、有効な心拍がなく、脈が触知できない状態です。電気ショックが有効ではなくAEDなどの除細動器は使えません(使おうとしても自動判定で動かない)。

心静止

心停止の最も深刻な状況です。心電図の上ではP波が見られる事もありますがQRS波が見られず心室が停止している状態となります。たいていは一本の基線のみが表示されます(ドラマなどで良く見るピーという状態)。

心臓の電気的な興奮がないため、AEDなどの除細動器が有効ではありません。直ちに心臓マッサージなど心肺蘇生処置や昇圧剤の処置が必要です。逆に言えば心室細動など心臓が痙攣して暴れている状態は、除細動器でしか処置できないという事です。

まとめ

日本国内では1年間で7.9万人の方が心臓突然死で亡くなっています。1日約200人です。その原因の多くが心室細動です。心室細動からの救命を行うのは迅速な心肺蘇生と、AEDを使った電気ショックが有効です。

電気ショックが1分遅れるごとに蘇生率が10%減っていき、10分で蘇生は非常に困難になります。救急に連絡して到着するのを待つより、その場に居合わせた人がAED+胸骨圧迫処置を行うと回復率が何倍にもなるのが現実にあり、AEDの一般的な認識と普及は大切です。

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