人工呼吸器の方式や原理

治療用機器

はじめに

酸素は、呼吸によって肺から血液中へと取り込まれ、全身の組織へ運ばれていきます。
そして、全身の組織で消費された酸素は二酸化炭素に変わり、血液に乗って肺に運ばれ、また呼吸によって身体の外部へと排出されます。
この重要な役割を果たしている呼吸の機能が病気などによって低下したり、停止した場合、何らかの方法によって補われる必要があります。
その役割を果たしているのが人工呼吸器です。
今回は、人工呼吸器について方式や原理を見ていくことにしましょう。

人工呼吸器の方式や原理

方式や原理には以下のようなものがあります。

体外式陰圧呼吸器

体幹の部分を覆うように装置を取付け、陰圧をかけると、胸郭が引っ張り上げられるように膨らむので、空気を肺内に取り込みやすくなります。
この原理を使う方法が体外式陰圧呼吸器(胸郭陰圧呼吸器)です。
この方式は「鉄の肺」とも呼ばれ、ポリオが流行した20世紀前半に開発されました。
人工呼吸器の元祖ともいえる方式であり、現在ではほとんど使われることがありませんが、自発的な呼吸と同じ方式であるため、最近では補助的な換気装置として見直されてきてもいます。

陽圧呼吸方式

陽圧をかけたガスを肺内へと押し込む仕組みのもので、現在「人工呼吸器」といえばほとんどがこの方式です。
大きく分けて侵襲的陽圧換気(IPPV)と非侵襲的陽圧換気(NPPV)と呼ばれるものがあります。

IPPVでは、切開によって気管に直接チューブを挿入し(短期間の場合は切開せず鼻や口から挿入することもあります)、チューブのもう一方の端は人工呼吸器に接続されています。
作動原理を見てみると、人工呼吸器には吸気弁と呼気弁という装置が取り付けられており、呼気弁が閉じて吸気弁が開いているときにはガスが患者さんの肺内へと送り込まれます。
そして、吸気弁が閉じると、呼気弁が開き、肺と胸郭の弾性(縮もうとする力)によってガスが排出されるという仕組みになっています。

NPPVは1990年ごろから使われ始めた比較的新しい方法で、主として呼吸不全の症状を持つ患者さんに用いられています。
この方法では、IPPVのように切開やチューブの挿入を行うことなく、マスクを顔面に密着させて使用し、陽圧をかけて呼吸を補助します。
IPPVではほぼ強制的にガスを肺内へと送り込むため、肺の組織が異常な圧力を受けてしまい、場合によっては組織が損傷してしまうこともあります。
しかしNPPVではそのような合併症が起こりにくいことに加え、その名の通り侵襲性が低い(体を傷つけない)という長所があります。
その反面、肺内まで直接的にガスを送り込むわけではないので、呼吸状態の改善が思ったようには得られないことがある、ガスが気管支ではなく食道を通じて胃内へ送り込まれてしまうことがあるといった短所があります。

最後に

最近では人工呼吸器でもデジタル化が進んでおり、より細やかな制御を行えるようになってきました。
そのおかげで、体重がわずか数百グラムという未熟児の赤ちゃんでも人工呼吸器を使うことができるようになり、今まで助からなかった命が救われるケースも増えてきています。

ピックアップ記事

関連記事一覧