人工呼吸器の3種類のモードと換気モード方式の理解

生体現象測定記録・監視用機器

自力での呼吸が困難となった患者さんに使用し、吸気・呼気の管理および維持を行う医療機器・人工呼吸器。しかしその使用においては、呼吸器官に外部から力を加える関係からリスクを伴います。それを回避するための換気モードには、どのような種類が見られるのでしょうか。

換気モードの必要性

人工呼吸器によって、肺胞換気の維持・気道の確保・酸素化の改善・呼吸仕事量の補助といった効果を得られます。しかし同時に気道に強い圧力を掛ける可能性があり、縦隔気腫や気胸など圧外傷や、循環器の異常・脳圧亢進のようなリスクを伴います。

そういった懸念を回避し患者の負担を軽減するためには、適切なモードによる運用が欠かせません。

基本的な換気モードとしては、以下のような3タイプが挙げられます。

A/C(補助/調節換気)

Assist/Control 補助換気と調整換気を併用するモードです。

自発呼吸が設定回数に達しない場合は、設定換気回数に基づく調整換気を行います。設定時間内に自発呼吸が認められる場合は、呼吸と同調した補助喚起を行います。

呼吸努力が軽減されるため、急性呼吸不全で特に効果を発揮します。しかし以下のようなデメリットが想定されるため注意が必要です。

考えられるデメリットの1つは、一定の間隔で喚起し続けるため、患者によっては過換気になる場合があるという点です。また、自発呼吸が行える段階まで回復すると、換気リズムとのタイミングが噛み合わず、呼吸困難に陥ることがあるという点も挙げられます。

これらリスクを避けるため、安定した自発呼吸が確認され次第設定を変更する必要があります。

SIMV(同期式間欠的強制換気)

synchronized intermittent mandatory ventilation 自発呼吸が確認できるものの、十分な換気を必要とする場合に使われるモードです。

設定された回数より呼吸が少ない場合には設定回数分の強制換気を行い、呼吸回数が設定回数を上回る場合は、後述するPSVか自発呼吸を優先し補助を停止します。

吸気努力なしで設定した換気回数を上限に、吸気努力があれば設定された一定の一回換気を行います。

CPAP(持続的気道陽圧)

Continuous Positive Airway Pressure 自発呼吸が行える患者に対し、気道確保を行う際に使用されるモードです。

換気補助は行わず、自発呼吸のタイミング・流量・呼気・換気量をすべて患者に依存して動作します。強制換気が行われないため、呼吸停止の可能性がある場合や、薬剤投与による麻酔や薬剤による呼吸抑制がある場合に使用してはいけません。

VCVとPCV

人工呼吸器の換気モードの設定は、VCV(従量式)とPCV(従圧式)の二つに分けられA/C・SIMVモードの選択後に設定します。

VCVは、一回換気量と吸気流速を設定して、設定された換気量に達するまで圧が上がるモードです。一回換気量が固定されているため確実に一定の換気量が保証される他に、波形から気道や肺の状態を確認することができます。

PCVは、呼吸器官に均等に圧力を掛けながら換気するモードです。気道内圧の必要以上の上昇を抑えることができます。換気量は保証されませんが、自発呼吸に対する同調性に優れています。

PSV

自発呼吸に補助換気が必要な時は、PS(プレッシャーサポート)と呼ばれる機能を追加します。吸気支持率を設定することで、換気の部分的補助を行います。SIMVかCPAPモードに付加することができ、主に離脱前の段階で使用されます。

まとめ

人工呼吸器を使用するにあたり、A/C・SIMV・CPAPの3つの基本モードとVCV・PCVのモードはぜひ理解しておきましょう。メーカーにより各モードの名称が違う場合があるので、取扱説明書は熟読の上、適切なモードの処置を心がけましょう。

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