心電図のp波とは ~左房負荷や右房負荷について~

生体現象測定記録・監視用機器

心臓は拍動と同時に、右心房にある洞結節から電気信号を発生します。それらは心房内を伝わりながら心房を収縮後、房室結節を通り心室に伝わります。そのような電気興奮を波形として記録した物が「心電図」です。今回は心房の興奮を表す「P波」について見ていきましょう。

興奮刺激による心臓内の流れ

心臓の規則的な拍動に対して、命令を出しているのが洞房結節(とうぼうけっせつ)という右心房に位置している紡錘形の細胞の集まりです。心房の興奮はこの洞結節から始まります。つまり心房興奮は右房興奮から始まります。この間隔により心臓の心拍の速さが決まるのです。

発生した興奮刺激によって心房が収縮を起こし、左心房へは心房間伝搬に関わるバッハマン束によって洞房結節の興奮が伝えられます。

伝導路である前結節間路・中結節間路・後結節間路から心房内の心筋を通って、房室結節へと伝わった興奮刺激はヒス束から左脚・右脚へ、そして心筋細胞(線維)であるプルキンエ線維へと順々に伝わって、心室の収縮を起こします。

12誘導心電図

現在、多くの病院で行われている心電図による検査は「12誘導心電図」です。心臓内の筋肉が興奮する時に生じる電気的活動を、身体表面に置いた電極によって12種類の波形が記録されます。12の方向から心臓を流れる電気興奮を観察して、全体像を把握します。

P波とは

P波は心房収縮による波形で脱分極(膜電位の減少)に相当します。P波前半部分3分の2が右心房での興奮で、後半の3分の2が左心房の興奮を反映しており、この両者が合わさることで1つの波形を形成します。

心房が大きいことでP波は高くなったり太くなったりします。P波のピーク(高さ)は大きくて0.25mVで高いような場合は異常ですが、低いものに関しては個人差と考えていいでしょう。

P波の幅は0.12秒以上を左房負荷(左心房に負担がかかった時に見られる心電図のP波が変化する所見)、振幅においては2.5mm以上を右房負荷(先天性心疾患や肺高血圧などによって右心房に負荷がかかって変化する所見)と、診断できるのではないでしょうか。

左房負荷

左房に負荷がかかることで拡大するとP波の左房成分が大きくなり、その拡大によって伝導時間の延長でP波の幅に現れます。左房負荷が示す代表的な疾患は、僧帽弁疾患・虚血性心疾患・高血圧・心筋疾患などがあります。

右房負荷

右房に負荷がかかることで拡大し右房成分が大きくなって、尖鋭化した形の高いP波が見られます。右房負荷が示す代表的な疾患は慢性肺性心・急性肺性心・特発性肺高血圧・心房中隔欠損などがあります。

まとめ

P波の始まりによって心房の興奮の始まりを意味し、その終末部においては心房興奮が全体に行き渡ったということがわかります。心房に対する負荷によって、心房筋は薄いため主として心房の拡大が起きます。それによって心電図ではP波の形態に変化が生じるのです。

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